【令和6年度改正】中小企業向け賃上げ促進税制で控除限度額の繰越が可能に

資本金1億円以下の中小企業向け賃上げ促進税制(旧所得拡大促進税制)については、原則の税額控除率15%はそのままに、新たな控除税率の上乗せ措置の創設や5年間の繰越税額控除制度が新設されました。

令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度において適用されます。

中小企業庁:中小企業向け「賃上げ促進税制」 (meti.go.jp)

改正前の税額控除率

  1. 雇用者の給与等支給額(前年度比)+1.5%以上⇒15%(原則)
  2. 雇用者の給与等支給額(前年度比)+2.5%以上⇒30%(上乗せ措置①)

教育訓練費の額前年度比+10%以上の場合、上記1.2.にそれぞれ+10%(上乗せ措置②)

改正後の上乗せ措置

  • (上乗せ措置①)・・・据置
  • (上乗せ措置②)・・・下線部改正

教育訓練費の額前年比+5%以上、かつ、教育訓練費の額≧雇用者給与等支給額の0.05%で、上記1.2.にそれぞれ+10%

  • (上乗せ措置③)・・・新設

くるみん認定以上or えるぼし認定(二段階目以上)を受けている場合、さらに+5%

全ての上乗せ措置該当で最大45%(改正前は最大40%)の税額控除が可能となります。

「くるみん」、「えるぼし」とは?

厚生労働省の認定を受けた企業の認可マークで、くるみんは子育てサポートについて常時雇用者数101人以上、えるぼしは女性活躍促進について常時雇用者数301人以上の企業を対象とし、行動計画の策定及び届出が義務化されています。

【厚生労働省】

くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて

女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

5年間の繰越税額控除制度(新設)

税額控除の制度であるため、従来は給与等支給額増加の要件を満たしていても欠損(赤字)事業年度ではそもそも適用不可でしたし、黒字であっても控除上限額(法人税額等の20%相当)により本来の税額控除額の満額を享受できないケースも多かったです。

改正により、発生した事業年度において控除しきれなかった控除限度超過額については、5年間の繰越しができることとなり節税のチャンスが拡大しました。ただし、繰越税額控除を適用する事業年度において、全雇用者の給与等支給額が前年度より増加している場合に限ります。

欠損事業年度では賃上げ促進税制の申告は不要でしたが、改正後は給与等支給額増加の要件を満たす場合には、控除限度超過額の繰越しの申告が必要となります。繰越後の事業年度においても黒字の場合には繰越控除の適用の可否の検証が必要ですし、適用不可であっても「繰越税額控除限度超過額の明細書」を添付して申告し続けなければなりません。

過去には国税庁から下記のような注意喚起もありましたが、本税制に関しては毎年のように改正が行われているため、申告書の作成者はその都度、適用要件や別表記載要領を確認のうえ、細心の注意が必要です。

適用年度の前事業年度の月数が異なる場合や組織再編成を行っている場合などに該当しない限り、前事業年度における雇用者給与等支給額を記載することになりますが、当該前事業年度に退職した従業員に対する給与等の支給額を差し引いて記載する等の誤りにより、本来であれば本税制の適用を受けることができないにもかかわらず本税制の適用を受けている事例や、誤って算出された金額に基づいて本税制の適用を受けている事例が見受けられます。

また、本税制の適用に当たり、控除される金額の計算の基礎となる控除対象雇用者給与等支給増加額は、確定申告書等に添付された書類に記載された控除対象雇用者給与等支給増加額を限度とするといった要件が付されているため、例えば、別表に記載した金額の誤りにより控除対象雇用者給与等支給増加額を本来より少なく算出している場合には、更正の請求を行うことはできません。

なお、令和6年4月1日以後終了事業年度分で使用する別表は、別表六(二十四)で、別表番号も変わっております。

別表六(二十四)記載の仕方

この記事を書いた人

押渡部 優子